商社の男

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木島は、商社マンらしく仕事が忙しいのか 日比谷でのデートの後、会ったのは一度だけで ご飯を食べに行き、家まで送ってもらうと 別れ際にキスされた あれから、2週間以上会っていないが メッセージアプリでの連絡はとっていた 結構マメだし、女子ウケ良さそうな人だよな ライバル、いるかもだけど ここは頑張らねば 空港デートは、初めてだ 美穂の実家は長野でリンゴ農家を営んでいる 収穫の時期は、美穂ですら駆り出される事がある 今は、外国人労働者に頼る事も多い 毎年同じ時期に来てくれる人がいて、細かい事を言わなくてもすぐ作業に入ってもらえるのは、 (即戦力ってやつ) とても助かる、と母さんは言っていた 日本人の人口が減り、うちのような小さな農家、先々どうなっていくのか 考えても、答えは出ないのだけど 美穂には、大学生の弟がいるので、 卒業して地元就職すれば いずれ彼が家業を継ぐことになるだろう ひとまず繋がった、として そうなった時に、実家に美穂の居場所が 果たしてあるのか あったとしても 長野に帰りたくないよ やっぱり東京が好き 自分には農家の嫁は務まらない、 美穂はそう思っていた 何しろお茶飲みの話題ときたら、ご近所の噂話、あのうちの嫁はどーとか、あそこんちの三男はあーだとか、しかないのだから。 世間が狭くてやんなっちゃう
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