悪夢のような現実

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悪夢のような現実

 あのあと······俺は【選定の水晶】で"無職"ではないジョブだということが証明された。  そしてそれは魔王に相応しくないジョブだったので、俺は無事に魔王の嫁ルートも回避。  そのあと町で自分のジョブに合った職に就き、日々帰る方法を探す。  そしてとうとう元の世界に帰る方法を見つけ、両親がいる家に帰れた。  普通に学校へ通って仲の良い家族と暮らし、いつかできるかもしれない可愛い恋人と付き合う。  可もなく不可もなく、平穏で自由な生活······を、俺は送りたかった!  もう1度言おう。  俺は、元の世界で平穏で自由な生活を()()()()()()()()()!!  なのにさぁ······  「マヒル、どんな式にしたい? ドレスは何色がいい?」  「······」  「最低3か月は婚約期間がいるから待たないダメだけど、そこからすぐに式を挙げようね」  「······」  「マヒル? どうしたの? 顔色悪いけど」  「魔王様、結婚とは人生の大きな節目です。最近はマリッジブルーになる者も珍しくないと聞きます」  なんでこうなった?  仕事をする魔王。  その膝の上に座る俺。  そんな俺に文句を言わない、睨まないリカルド。  時折執務室に入ってくる魔族たちも嫌な顔をせず、むしろ全員がお祝いの言葉を贈る。  誰もが人間である俺と魔王の婚姻を反対せず、祝福している。  リカルド曰く、城下町はお祭り騒ぎで色んな人たちからの贈り物がたくさん届いているそうだ。  もう1度言おう。  なんでこうなった······!?  「マヒル、おやつの時間になったら話し合おうか。ここ最近、全然ゆっくり話せてなかったし」  「あ、ああ······」  ここ最近というか、まず1度でもちゃんと話したことがあるかすら疑問だ。  俺は小さくため息を吐く。  そして数日前に起きた悪夢のような現実を思い出す。
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