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「なんでそんなことになる!?」
「ジョブが"魔王"だと、自分より弱い子に強い威圧をかけちゃうんだ。訓練をしたから今はそこまで支障ないけど、触れちゃったら自動でそのまま······」
「あーなるほど」
なら強い者を······と言いたいが、"魔王"より強い奴なんてほとんどいないんだろうな。
しかもこいつの好みを聞く限り、確実に弱いに部類される奴らしかいない。
「ジョブによったら触れられる子はいるよ。でも、その子たちはダメで······」
「なんで? なにか問題でもあるのか?」
俺の言葉に魔王は遠い目をしながら答えた。
「······好みじゃないんだよね。ジョブが"娼婦"や"男妾"だから、一夜の相手ならともかく、お嫁さんにするにはどうしても······」
詰んでるな。
だからリカルドはジョブのことを気にしていたのか。
魔王はジョブのせいで好みの子と離れないといけないし、その好みの子は恐怖で死にかける。
たしかに慎重になるし、反対もする。
「じゃあ、俺の"無職"はどうなる訳?」
「"無職"はなんのスキルもない代わりに、ほかのジョブの影響をほとんど受けない。だからマヒルは僕の運命なんだ」
「なーるほど」
ドストライクな上、ジョブの影響も受けない。
そりゃあ、反対する理由なんてある訳ない。
国全体がお祭りムードになるのも当然のことだ。
「だけど人族って、魔族が嫌いなんだよね。特に魔王なんて憎悪の対象で······マヒルも僕のこと睨んでたし、すぐに逃げようとするし」
「いや、俺は······」
まだ1度も逃げていない······と言おうとしたが、誘拐される前に逃げようとして捕まったことを思い出す。
あれのせいか······
「だから目を離したら逃げちゃうんじゃないかって思って、ずっと抱き締めていたんだ」
「······」
俺は頭を抱えたくなった。
抱っこ、歩かせない、給餌行為、その他諸々全部、嫌がらせじゃなかったのかよ······
ずっと嫌がらせだと思っていた自分の器が小さいんじゃないかと少し凹む。
というか、これからどうしようか。
もしこいつが極悪非道な魔王だったら俺はそのまま怒鳴り、嫌いだと罵れた。
金銭などをせびり、ここから逃げ出す計画を立てていただろう。
でもこいつはただ不器用なだけ。
ただ好意が空回っていただけ。
ここまで純粋で色々と不憫な奴を突き放せるか?
······俺は無理だ。
俺にだって良心はある。
「マヒル、僕ができることならなんでもするから! ほしい物なら用意するし、世界だって滅ぼすから!!」
「世界は絶対に滅ぼすなっ!」
魔王らしいけど、その力の使い方はマイナスだからな!
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