魔王は意外と可愛い

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魔王は意外と可愛い

 そもそも、冷静になって考えてほしい。  ここで俺がこいつを突き放しても殺されることはないだろう。  一応(強制的だが)一緒にいた訳だし、こいつが結構いい奴なのは知っている。  ただし、世界が破壊される可能性が高い。  てか、絶対に100%壊される。  それがわかっているのに突き放せるか?  もうこれは良心が痛む以前の問題でもあった。  まぁ、でも······  「マヒル······!」  「······」  上目遣いでこちらを見る魔王に少しだけ、ほんとーに少しだけ、可愛いと思う。  なんか、庇護欲(?)みたいなのが生まれる。  泣かせたら小さい子いじめてるのと同じ心境に至りそう······  「······と、友達からなら······」  「!!」  気づけば俺はそう言っていて、魔王にガバッと抱き締められた。  あーなんか、魔王が犬みたいに見えた瞬間だわ。  近所で飼われていた俺によく懐いているクーちゃん(柴犬のオス)もこんな感じだったなぁ。  現実逃避として俺はそんなことを考える。  「マヒル、ありがとうっ!! 大好き! 愛してる!」  「あーわかったわかった! いちいち抱きつくな! 暑苦しい!」  しょうがない。  ここで世話になりながらこれからのことをゆっくり考えよう。  このあと俺は魔王と話し合い、一緒にいるためのルールを作った。  たとえ悪気はなくとも、1日中抱っこなんてストレスがヤバい。  こいつがまともなうちになんとか俺の安寧を維持するルールが必要だった。  とりあえず、俺を抱っこするのは食事の時と寝る時のみ。  日中は俺に自由時間をあげる。  結婚は俺がいいと言うまでしない······などなど。  とにかく、かなりの数のルールを作った。  一応誤解される前に言っておくが、これでも俺はかなり譲歩した。  抱っこなんてどんな時でも嫌だが、1日中よりかはマシ。  給餌行為もそう。  これだけは譲れないと強く言う魔王に根負けした。  そしてなんとか確保した自由時間だが、俺1人だと城の中で迷子になるので結果的に魔王の私室か執務室で過ごすことに。  なんでも魔王曰く、自分か100歩譲ってリカルド以外の奴に俺を任したくないそうだ。  『マヒルはすっごく魅力的だから、1人でウロウロしたらダメだよ』  『あのなぁ、俺が魅力的なんじゃない。せいぜいジョブが魅力的? なんだよ。あんたの趣味が周囲と同じだと思うな』  『そんなことないよ! とにかく、知らない人にはついていっちゃダメ。襲われて食べられちゃうから』  『それはどっちの意味だよ······』
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