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召喚からの捨てられ
俺─天野真昼は少々変わった両親がいること以外は、なんの変哲もない普通の男子高校。
いや、少々じゃない。
かなり変わった両親の間違いだった······
親父はラノベ、アニメ、マンガ、ゲームが大好きなオタク。
どれくらい好きかというと、自分でゲーム会社を立ち上げるほど。
お袋はBLのマンガ、小説、ゲームが大好物らしい自称・貴腐人。
中学生の時にBLの虜になり、高校生で同人作家からの商業BL作家になって今も人気作を生み出している。
まぁでも、そこは別にいい。
好きなものがあるのはいいことだし、おかげで俺はかなり自由に育てられた。
勉強もかなり低くなければなにも言われないし、将来もやりたいことを好きにやりなさいと常々言われた。
困っていることがあるとすれば、親父の異世界召喚の熱弁とお袋のBL布教くらい。
俺はそんな癖は強いが優しい家族が嫌いじゃなかったし、今の生活に不満なんてなかった。
高校卒業したら大学に行って、ホワイトな企業に入社。
素敵な恋人を作り、結婚して定年まで働いて、老後は未来の嫁さんとのんびり暮らす。
そんな幸せだが平凡な未来を築きたいと思いつつ、まぁそれなりに青春を謳歌していた。
なのに······
「お前たちは魔王からこの国を守ってもらう勇者候補として召喚された」
学校からの帰り道、突然地面に丸い幾何学的模様が浮かび上がり、気がついたらこれ。
偉そうな態度で"召喚"と言ったのは、白い髭を蓄えた小太りのオッサン。
豪華な服と頭の冠、そして玉座に座るからすぐに王様なんだと理解はできた。
そして、これが親父の憧れだった異世界召喚だということも理解してしまった。
俺は辺りを見渡し、観察をする。
玉座より少し低い場所にある2つの豪奢な椅子に座るのは着飾った男女。
左右の壁際には鎧を纏い剣を差す人や、ローブに杖という魔法使いのテンプレ姿の人もいる。
そして自分の隣には同じ奴─召喚された人間がいた。
「異世界召喚······」
その男も異世界召喚だとわかるほどのラノベ知識はあるみたい。
しかもそいつ、顔が芸能人みたいに整っていてかなりモテそう。
てか、制服が一緒だから同じ学校じゃね?
こんな人いたっけ······?
そう思っていると男が俺に気づいた。
こっちが軽く会釈をすると俺の方へ近づき、手を差し出した。
「君も同じく召喚された子だよね? 怪我とかはない?」
「え? あ、ああ。ない······」
差し出された手を掴み、俺は立ち上がる。
でも頭の中は"?"でいっぱいだった。
なぜ、お前はそこまで冷静なんだ?
少しは慌ててもいいんじゃね?
「同じ学校だし知ってると思うけど、俺は桐谷透」
「桐谷、透······あっ」
思い出したぁ!
この人、うちの高校の1つ年上の副会長じゃん!
クラスの女子がいつもキャーキャー言っていて、どっかの雑誌の読者モデルやっているらしいと聞いたことがある。
「えっと、俺は天野真昼です······」
うん······
俺は今すぐ、いるかもしれない神様に問いただしたい。
なんで副会長と一緒に召喚させるんだよと······
もうこの現実に頭を抱えしかない。
なぜなら俺の頭の中には、親父が力説していた異世界召喚の王道展開が浮かんでいたからだ。
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