華やかな中庭での雑談会

1/2
前へ
/40ページ
次へ

華やかな中庭での雑談会

 リューイのことを受け入れたあと俺は······丸3日間ベッドの住人となった。  飯食ってる時も寝る時も挿れっぱなし。  気絶してる間は休憩できるが、そこで疲労感が回復するかと聞かれたら首を横に振る。  初めて知った。  気絶と寝るって似ているようでまったく違うんだと······  俺の頭に"腹上死"の言葉が浮かんだ。  『お前は俺を殺す気か!? 罰として半年、抱っこ以外全部禁止だ!』  動けるようになったあと、俺が激怒してそう言ったのは当然のことだろう。  リューイは目をうるうるさせながらも頷いた。  本人も反省してるみたいだが、ここは心を鬼にしないといけない。  これでも抱っこは妥協したんだ。  文句は云わせない。  ······が、これはかわいそうだと魔王城で働く総勢1000人以上のほとんどが俺に許してあげてと嘆願書を出してきた。  さすがは、【皆に好かれる素敵な魔王様】······  仕方なく、"体力を考えて、翌日に支障が出ない範囲"という条件で2ヶ月で許した。  そして、それが1週間ほど前の話。  「それで、ちゃんと魔王様は守ってるの?」  「ああ。よっぽど、最初の罰が堪えたみたい。まぁ、不定期に好きにさせて爆発しないように調整していくつもりだ」  「あーそれがいいと思う。にしても、やっぱり魔王様は真昼くんのことが大好きだね」  「それを言うなら、リカルドも透のこと溺愛しているじゃん」  「まぁね。重すぎるくらいだけど······」  ここは魔王城にある中庭。  季節ごとに咲く花が変わり、毎日庭師のおっちゃん(年齢は忘れたそうだが、リューイよりも年上らしい)が手入れしているからいつ見ても綺麗だ。  そんな中庭にテーブルを置き、俺とリカルドに誘拐(保護)された透の雑談会というお茶をする。  まぁ、2人とも元気で晴れた日に······という条件があるけど。  俺が"副会長"から"透"呼びに変え、敬語を外したのは本人からの頼みによるものだ。  『ここは学校じゃないから透でいいよ。あと、敬語を聞くとリカルドさんのことを思い出すから、タメにしてほしいんだ』  誤解されたら困るが、透はリカルドのことが嫌いではない。  俺が追い出されたあと色々あって心身共に弱っている所を、リカルドに助けられた。  それからなんだかんだあって今では相思相愛。  この"なんだかんだ"の間になにがあったかを俺は聞かない。  聞いたら後悔しそうだから。  まぁ、そんな感じでよく俺とリューイペア、透とリカルドペアで休み時間中はイチャイチャしている。  こうしていると癒されると2人は力説し、俺と透は抵抗を諦めた。  そしてそのせいで魔王城には"緊急の用事がない限り、休み時間の間は執務室に近寄るべからず"という暗黙了解のルールが生まれたそうだ。  それでも透がリカルドのことを思い出すのを嫌がる理由はただ1つ。  『よ······夜が、疲れるんだ。だから、今だけ穏やかな時間がほしい······』  この時の透の顔はかなり疲労感がにじみ出ていて、とても他人ごととは思えなかった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加