華やかな中庭での雑談会

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 しかし人の夜の事情に首を突っ込むなんて野暮なことはできない。  俺にできるのは異世界では味わえない地球の料理を作り、この雑談会のおやつにすることくらい。  「あー2日目のカレーってこんなにも美味しいんだね。これぞ、家庭の味ってやつだよ」  なので、ここで食べるものはだいたいこの華やかな中庭と雰囲気に合っていない。  それでもかなり喜んでもらえるから作りがいがある。  「このカレーもそうだけど、この前の肉じゃがやチャーハンも美味しかったなぁ」  「それはなにより。てか、透って意外だけど家庭的な料理が好きだよな」  学校だと高級感の溢れるイケメンだと言われていたから、こういう家庭料理を好むとは思わなかった。  「あー······あそこにいた時は外食とかが多かったから、カレーとか肉じゃがとかが無性に食べたくなる。あと、ここだと食べられないからね」  「学生とモデルの両立って大変そうだもんな」  「まぁね······それよりも、真昼くんはすごいね。まさか、スパイスでカレーを作るなんて」  そう。  このカレーは俺が試行錯誤してようやく再現したものだ。  なにせスパイスの名前が違うし、ない物は代用品を使うから分量を変えないといけない。  あれは大変だった······  「小学生の頃から親父とお袋に料理とかを仕込まれたんだよ。親父は『いつ異世界に召喚されてもいいように』で、お袋は『いつ胃袋を掴みたい彼氏ができてもいいように』って」  「か、変わった両親だね······」  「ああ。ほかでは見かけないような変わった親だった」  しかし、両親の言う通りのことが起きたのは事実。  俺は異世界召喚され、なんだかんだ可愛い彼氏······つーか、旦那ができた。  別に料理の腕は関係ないだろうが、こうして懐かしい料理を堪能できるんだから感謝しかない。  「今回はチキンのカレーだから、次はビーフのカレーを作るか」  「というか、あれは鶏なの?」  透の言う"あれ"とは、ぎゃあぎゃあと鳴く体長2メートルほどの巨大な鳥のこと。  2つの鶏冠のある頭と目が半分飛びでているという、ザ・異世界の生き物。  見た目はかなりキモイが、味はスーパーに売ってた安い鶏肉より味・食感が断然良かった。  「あの見た目で美味しいとか、もはや詐欺だよなぁ······」  「そうだね······」  思わず遠い目になる俺と透。  でも、冗談抜きで美味しいんだよな······
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