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手紙と幸せの誓い
カレーは完食すればそのお皿はメイドさんたちが持っていくので、俺たちはお茶を飲みながらのんびりと過ごす。
「紅茶もいいけど、やっぱり緑茶って飲むとほっとするよね」
「ああ。リューイが見つけてくれた時は泣いて喜んだわ。今度は和菓子でも作ろうかな」
「小豆はあるの?」
「一応。でも食用として扱われてなかったから、いきなり調理場に持って行くのは躊躇するんだよな」
「たしかに。それに味も好き嫌い別れるしね。リカルドは好きそうなイメージがある」
「同感。逆にリューイは無理かな。あんこは駄目そうなイメージが強い」
「わかる」
あー······
やっぱり、同郷の人がいて良かったと思う。
このなんともいえない安心感がある。
「そういえば、真昼くんは出したの? 手紙」
「あー。あの、"1回だけ別世界の肉親に手紙を出せる"というなんともいえない限定的な魔法の······」
それはリューイが一生懸命探して見つけた魔法。
リューイ曰く、先々代の魔王の趣味がオリジナル魔法の作成だったらしい。
この使い勝手が微妙な魔法はなんでも、その先々代の魔王が酔ったいきいおいで作ってできたそうだ。
本当に限定的すぎる······
「すぐに使った。異世界にいることやジョブの話、リューイのこととか色々と報告しないといけないし」
「そっか」
「いくら変わり者の両親でもさすがに心配してると思うし」
かなり変わってはいるが、親父たちはいい親だった。
お袋はもちろん、異世界召喚に憧れている親父も俺がなにかの事件に巻き込まれたと思うだろ。
ここに永住するしかないんだし、たとえ帰れたとしてもリューイを置いて帰りますはもう無理だ。
だからたった1通の手紙だけでもいいから俺は2人に無事を知らせたかった。
「透は出したのか?」
「······まだ、検討中だよ。あの人たちは真昼くんのご両親みたいにライトノベルとか読まないから。手紙を出したら、イタズラだと思われて捨てられる可能性があるからね」
「その可能性があるよな······」
俺の所も届くかどうかわからない。
なにせ、作って終わりの1度も使われたことのない魔法だそうだ。
理論上では可能らしい。
だが、異世界に召喚された人間は希少な上に、ここに来る前にほとんどの奴が死んでしまうから使ったことがない。
正直、俺だって半信半疑だし。
手紙を出したのは5日前だけど、いつか返事が来るのかどうか······
「マ・ヒ・ル!」
名前を呼ばれたと同時に後ろからぎゅっと抱き締められた。
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