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「リューイ、どうした? てか、仕事は?」
「休憩時間。あっトール、リカルドが会いたいからきてって」
「わ、わかった」
透は少し照れた様子でリカルドのいる執務室へ向かった。
その間、リューイは俺の頬を自分の頬でスリスリ。
黒紫色のサラサラな髪が少しくすぐったいが、もう慣れた。
「仕事頑張ったよ。マヒル、褒めてー」
「はいはい。ほら、よ~しよしよし」
そう言いながら俺がリューイの頭を撫でると、動く犬の耳と尻尾の幻覚が見えるほど喜ぶ。
うん、やっぱり可愛いな。
そのあと流れるような自然な動きで椅子に座り、俺を膝に乗せるリューイ。
もう神業と言っても過言ではないその一切無駄のない動きに心の中で拍手。
するとリューイが笑みを浮かべて教えてくれた。
「実はね、マヒルに朗報だよ」
「なに?」
「さっき、手紙の返事が届いたよ」
「えっマジっ!?」
「ほら、これ」
リューイは懐から水色の封筒を取り出し、俺に渡した。
封筒の宛名には"真昼へ 父・母より"と書かれている。
この綺麗な筆跡も見覚えがあり、多分これはお袋の字だな。
親父の字、めちゃくちゃ汚くて読めないし。
「なぁ、読んでもいいか······?」
「いいよ」
ドキドキしながら封を切り、手紙を開く。
そこには······
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突然、あなたの部屋に現れた手紙を読んだわ。
行方不明になって心配したけど、まさか異世界に召喚されるなんてびっくりよ。
ちなみに、お父さんは
『やっぱり、異世界召喚は全人類の憧れだよな。さすがは真昼。その憧れを叶えるとは、俺の息子なだけはある!』
って目をキラキラさせていたわ。
息子としては複雑かしら?
でも手紙が届くまでは朝から晩まで真昼のこと探していて、ちゃんと心配していたから安心してね。
もう2度と会えないのは寂しいけど、あなたはちゃんと幸せになるのよ。
孫の顔よりそっちの方が嬉しいから。
男なんだから覚悟を決めなさい。
あと、彼氏のリューイくんはその料理の腕で胃袋を掴みなさい。
運命だけであぐらかいたらダメよ。
この手のものは元婚約者や候補とかの男や女が現れるのが定番よ。
その時は泣寝入りせず、格の違いを見せつけてやりなさい。
私もお父さんも、あなたの幸せを願っています。
P.S リューイくんが攻めで、真昼が受けよね?
今度、真昼の手紙を参考に妄想した2人をマンガで描くつもりだから
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