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『異世界での召喚はだいたい勇者召喚、もしくは聖女召喚がセオリーだ。そしてもし、この時召喚された人間が複数だった場合、高確率で1人は森に捨てられるか投獄。あとは生贄ルートもある』
たしか、捨てられる原因はだいたい3パターン。
①片方がイケメン(もしくは美少女)で王子王女が気に入ったから
②職業や適性する魔法系がショボかったから
③ただ単に勇者や聖女などの適正がある人間の召喚に巻き込まれただけ
原因が理不尽極まりないし、自分に当てはまりそうで怖い。
だってあの副会長だぞ。
スポーツ万能で、テストでは毎回学年1位という文武両道。
そして女子がキャーキャーしていて、ファンクラブまであると噂されるほどのイケメン&なんかの雑誌のモデル。
そんな相手に俺は勝てる要素があるかと聞かれたら、俺は絶対にないと断言できる。
今もそう。
ドレスを着た女(多分王女)の目が"♡"になって、副会長に熱烈な視線を向けている。
男(こっちは多分王子)も値踏みするような目で俺と副会長を見ている。
なんだろう。
初対面の奴に言うのもなんだけど、なんかキモい······
副会長もそう思ったのか少しだけ顔を歪ませた。
しかしそれは一瞬のことで、すぐにいつもの穏やかそうな表情に戻った。
もう、さすがだとしか言い様がない。
そしてそれから10分後······
「お前のような役立たずはいらぬ! 魔の森に捨て置け!」
副会長と一緒に用意された水晶玉(王道だな)で職業を確認。
勇者はどちらか1人らしく、年功序列として副会長から。
結果はまぁ予想通り、"勇者"。
ここは驚かない。
たださ······なんでおれが"無職"なんだよ!?
これには誰もが驚いて黙り、数秒後には爆笑の渦。
笑わなかったのは俺と副会長くらいだ。
この世界基準のジョブの良し悪しなんて知らないが、さすがにわかる。
"無職"はハズレジョブなんだと。
そのあと王様が俺を捨てるように命令。
役立たずはいらないし、こんな奴を召喚したのは王族の恥じだからなかったことにすると。
「ふっざけんな!!」
俺は明らかにヤバそうな紫色の森の真ん中で叫んだ。
神に、王様に、自分の運命に。
あと、やってきた王道展開にも怒りを覚えた。
「現実に王道なんていらねぇんだよっ!!」
俺の叫び声は森中に響き渡った。
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