手紙と幸せの誓い

3/3
前へ
/40ページ
次へ
 「うーん。やっぱ、親父もお袋もすげーわ」  突然現れた手紙に返事を書いてくれたのもそうだが、最後の追伸の内容は予想の斜め上をきた。  まさか、俺とリューイをコミカライズにするのかよ······  まぁ、半分はお袋の妄想だからいいんだけどさ。  「マヒル、なんて書いてるの? 異世界の文字って法則性がありそうだけど、結構複雑だね」  「あー······まぁ、幸せになれって書かれてる」  俺はマンガの件は墓まで持っていこうと心に誓った。  さすがに言えない。  「お義父さんとお義母さんから『大事な息子を顔も見たことないお前にはやらん!』とか書いてない?」  「ナイナイ。むしろ、お袋は歓喜してるぞ。手紙でお前のこと『リューイくん』って書いてるし」  「それなら良かった」  「······」  正直、この手紙の内容が親父とお袋の本心かはわからない。  もしかしたら、俺に心配をかけたり不安にさせないために強がりで書いたかもしれない。  もしかしたら、リューイの嫁になることを反対しているかもしれない。  ······いや、2人のことだからガチでそう書いてるかもしれない。  なにせ、よく"自分たちより幸せになりなさい"って言っていた人たちだし。  「リューイ」  「どうした?」  「俺はお前を幸せにする。だから、お前も俺を幸せにしてくれよ」  たいした親孝行なんてできなかった。  俺にできることはこの手紙を信じて幸せになることくらい。  「お前がいないと俺、冗談抜きですぐ死ぬからな」  異世界に頼れる人はほとんどいない。  ジョブが"無職"の俺はリューイがいないと生きていけない。  たとえなんとかして生きても、幸せになれるとは思えない。  あーあ。  絆された時点で薄々気づいていたけど、衣食住とか諸々リューイに依存してる節があるよな。  「大丈夫だよ」  するとリューイは俺の額にキスをした。  そしてささやいた。  「たとえマヒルが嫌だって言っても、僕はマヒルを逃がしてあげない。かっこよくて可愛くて、料理が上手で優しいお嫁さんなんてマヒルしかいないもん」  逃がしてあげない、か······  とんだヤバい奴に捕まったけど後悔はない。  「マヒル、大好き。僕の最愛」  異世界召喚なんてごめん。  男と恋愛なんてあり得ない。  時々、元の世界を思い出したりこれからのことに不安を感じることだってある。  でも······  「俺も好きだ。お前が俺を幸せにしてくれる分、俺もお前を幸せにする」  それでもいいかと思えるくらい、お前が幸せにしてくれるんだ。  ならこっちも、俺もお前のことを幸せにしないとな。  この可愛い可愛い旦那様をな。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加