僕と王様 side:リューイ

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僕と王様 side:リューイ

 僕は物心がつく頃から1人ぼっちだった。  両親について僕が知っていることはとても少ない。  父親は僕が赤子の頃に運命を見つけたとか言って村から出ていき、母親は村の長の1人娘。  だから僕に父親はいない。  母親は、父親が去ってしまったことによるショックで家に閉じ込もっている。  そして僕は村の外れにある洞窟の牢屋に閉じ込められていた。  文字の読み書きはできず、簡単な計算もできない。  誰かと関わることは滅多になく、不定期に与えられる食事だけが僕の生命線だった。  これは閉鎖的な村だからこその不幸で、もしここが王都とかだったら孤児院にでも放り込まれていた。  そしたらまだマシな生活が送れていただろう。  殺さないけど自由はない。  でも、いつ殺されてもおかしくない。  自分の手がうっすらとしか見えない牢屋の中で僕は1日をぼんやりと過ごしていた。  「初めまして、こんにちは」  でも、救いは突然やってきた。  村の誰よりも綺麗な服を着ていた男は僕を牢屋から出してくれた。  「僕はこの国の魔王をやっています。これからは······そうですね。"王様"とでも呼んでください」  魔王─王様は僕を連れて魔王城に帰った。  そこでお風呂に入り、温かい食事を食べ、ふかふかのベッドで寝かせてもらった。  まるで天国のような幸せ。  そして王様は学のない僕にたくさんのことを教えてくれた。  文字の読み書き、計算、歴史、礼儀作法、そして······  「リューイは僕の後継者なんですよ」  「こうけい、しゃ······?」  「はい。いつか魔王になるんです」  「? まおーは王様だよ」  「今はそうです。ですが、いつかリューイが魔王になる日がやってきます」  "リューイ"は王様がつけてくれた名前。  村にいた頃につけられた名前はあるけど、王様は"リューイ"と呼ぶ。  僕も今の名前の方が好きだからそれがいいと思っていた。  「リューイなら素敵な魔王になれますよ」  「······王様は、どんなまおーが好き?」  僕の問いに王様は笑って答えた。  「そうですね······民に寄り添える魔王が好きです。だからリューイもそんな魔王になってください。僕たち、歴代の魔王たちのように······」
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