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未来幸福実現党
動画配信サイトから流れ出したのは妙に明るい広告動画。老若男女がセリフと共にせり上がってくる。
『老後が心配、仕事がうまくいかない、学校でいじめられた、恋人に振られた…もう生きていけない。そう思ったあなた!ご安心ください!今世は救いのないハズレくじだっただけです!自分の未来は自分で決めよう!さぁ皆さん明るい未来へと飛び立ちましょう!そうだ、あの世へ行こう!未来幸福実現党』
自殺者数が世界一、過去一を記録した日本は無自殺計画法案が成立し、徹底的な自殺対策を行った。政府による24時間の行動監視はもちろん、国民の脳波は常時送信され自殺願望が出たと判断されれば即座に矯正収容となった。そんな監視国家が長続きするはずはなく、連日暴動は繰り返され、命の尊厳と自由権が日本中で叫ばれた。その革命の中心となったのが、未来幸福実現党のリーダー、現総理大臣の夢見路だ。夢見路は命は自分のものだ、生きるも死ぬも決めるのは自分の意思だ、と主張した。日本中が彼を正義とした。そして、安楽死は奨励されるまでになり、人の尊厳を強奪する殺人や傷害などの犯罪行為は以前よりもはるかに重罪となった。人を殴れば10年はムショから出ることはないし、死ぬまで身分証に犯罪歴が記される。夢見路が作った日本は、誰にも自由を侵されず、いつでも逃避ができる安心の国となった。
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