運命の2択

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 私には愛する息子がいる。息子は一昨日8歳の誕生日を迎えた小学2年生である。息子の名前は夫と2人で案を持ち合って相談した。最終的には私の案である「春翔」に決まった。入園式、入学式、入社式、これらは大体春に行われる。新しい環境に身を置いた時、羽ばたいていけるように、そんな願いが込められている。また、私の名前が「亜希」であり、秋と春で遊び心もあって良いのではないか、という理由もある。そんな背景もあって、息子のことは夫も私も親しみを込めて「ハル」と呼んだ。    ハルは大きな病気にかかることもなくスクスクと健康に育った。ペットを飼ったことすらなく、子育ては苦労した。しかし、夫が全面的に協力してくれたので問題なく8歳の誕生日を迎えることが出来た。土日は夫が仕事休みなので、夫がつきっきりでハルの面倒を見てくれた。夫は「俺が面倒見るから休んでいいよ」と言ってくれたが、夫とハルが2人で楽しそうにしているのを見ていることが私にとっては癒しであり、休みであった。そのため、私はハルが産まれてから幼稚園に入るまではほとんど遊びに出かけることもなく自宅で過ごした。    ハルは幼稚園の入園式、小学校の入学式、と無事大人の階段を駆け上がっていった。ハルは友達が多いようで、よく学校から帰ってきてすぐに遊びに出かけていくことが多い。家でも元気で明るいので学校でもそのままなんだろうな、と嬉しく思う。ハルと接する時間が減ったのは少し寂しいが、夕食の時にニコニコしながら今日の出来事を語るハルを見ているとそんなことはどうでもよくなってしまう。いじめや不登校で苦しむ子供たちも多数いる中でハルにはそんな心配要らなそうというだけでも私は幸せものなのだろう。自分の息子がいじめられているなんて考えただけでも胸が苦しくなる。
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