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私は車で急いで空港へと向かった。
パスポートは所持している財布の中に入っていたため、病院からそのまま空港へと直行できる。チケットは当然予約してないが、事情を話せばどうにかなるかもしれない。一縷の望みに懸けて私は空港へと急ぐ。制限時間は何時間だろうか。医者が私の自宅を特定して“処分“するまで3日かかるだろうか。今日中に海外に飛んで、明日には帰ってこないと間に合わないだろう。今日飛べなかったらおしまいだ。
私は滅多に法定速度を破ることもないため、速度を出しすぎると事故に遭いかねないが、精神が擦り切れるギリギリまで速度を上げた。
そんな時だった。
ラジオを車で流していたのだが、ラジオのニュースで「ナイトメア病」というワードが聞こえたのだ。
一体なんのニュースなのか。
もしかしたら、この状況を一変する重大ニュースかもしれない。
私はスピードを下げて、ニュースに耳を傾けた。
お願い神様。私を、ハルを、夫を救ってください。
ノイズ混じりの男性の低音ボイスが車内に静かに響いた。
「速報です。海外諸国で『ナイトメア病』の特効薬が販売禁止となることが決定しました。海外諸国では『ナイトメア病』が大流行し、特効薬が足りない現状です。そのため、現状の感染者が全員完治するまでは特効薬は販売及び輸出を禁止することが発表されました。」
なんてことだ…。
ハンドルを握る手の力が抜けていく。
もう、海外に飛んだところで特効薬は買えないというのか。海外に行けるかどうかすら怪しかったのに、海外に行けるかどうか以前の問題になってしまった。もう、特効薬を二つ手に入れるという最善の解決策は途絶えてしまったのだ。販売が再開される頃にはもう、“処分“されているかもしれない。
というか、“海外諸国“ってどういうことだ。
全世界で一斉に禁止したとでもいうのか?
世の中おかしい。
おかしいよ…。
もう現実逃避をするだけにはいかない。
向き合う必要がある。
“救うのは夫かハルか“。
運命の2択について。
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