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夫かハルか。
本来なら考えたくもない話だ。
夫は私の1番の理解者である。人生の半分は夫と過ごしており、夫のいない人生など考えられない。収入的な面でも夫は必要であり、現実的にこれからも生活していくためには夫を救うべきだ。
ハルは私と夫の唯一の息子である。ハルと夫では付き合いの長さが全然違うが、未来を考えたとき、私と夫よりもハルの方がずっと未来が期待できる。私の選択でハルの未来を奪ってしまうなんてことはあってはならないことだ。何より、夫が状況を知っているのだとしたら、夫はハルを救うようにいうだろう。
どちらを救いたいか、ならまだしも、救わなかった方は死ぬのだ。私がどちらか救いたいか選択するということは、どちらが死んでほしくないか選択したのと同じことだ。その議論に結論を出してしまうことは憚られる。倫理的に結論を出すことは難しいというのもあるが、本音で考えても結論を出すことは難しい。もし、私とハルのどちらかしか助からないとしたら、私は迷わずハルを救うことを決断するだろう。夫もおそらくそうする。夫は私の1番理解者であり、私は夫の1番の理解者なのだ。そのくらいは分かる。でも、私にとってはどちらも等しく愛しい存在だ。
いくら考えても答えは出ないだろう。
でも、出さなければいけない。
私はようやく決断した。
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