ねむり薬

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Case1 「おはようございます、お嬢様。目が覚めましたか?」 私がまだ眠りから覚めきらない目を擦りながら伸びをしていると、そう声をかけられた。 声のした方をみると、金髪碧眼のいかにも外国人という顔立ちの女性が、優しそうな顔でこちらを見ている。 彼女はこの家の執事で、私はいつも「セバスちゃん」と呼んでいる。 「んー、おはよう、セバスちゃん。今何時?」 寝起きの力のない声でそう尋ねると、「10時ですよ」と返してくれる。 10時と言っても朝ではなく、 窓の外がすっかり暗い、夜の10時だ。 私は昔から睡眠障害を患っているらしく、 他の人より睡眠時間を長く取らなければならないらしい。 だから、寝る時にはいつも睡眠薬を飲んでいる。 そして薬が切れて目覚めるのはいつも夜だった。 「らしい」というのは、私には昔の記憶がないからだ。 これも睡眠障害の弊害らしく、記憶がなくなる度に同じ説明をしているのだとセバスちゃんが教えてくれた。 睡眠障害のせいで学校にも働きにも行けない私は、自宅で絵の勉強をしている。 幸い私の家は比較的裕福な家庭らしく、私の生活費用の一切を親が面倒を見てくれている。 セバスちゃんも親か雇っている執事だが、 私が起きている時間は何時だろうとつきっきりでいてくれている。 いつか自分の絵を売って、少しでも親の負担を減らす事が私の目標だ。
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