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そんな事を考えながらキャンバスに向き合っていると、知らないうちに時間が経っていたようで、
窓からはカーテン越しに明かりが漏れ出していた。
集中が切れ、時間の経過に気づいた途端、急に眠くなってきた。
「眠くなって来ちゃった。今日はこの辺にしておこうかなぁ。」
私が欠伸をしながらそう言うと、何も言わずともセバスちゃんがお茶の準備を始めてくれていた。
「随分と集中されていましたから、お疲れでしょう。どうぞ、カモミールティーです。」
私は「ありがとう」とお礼を言いながら、差し出されたティーカップを受け取った。
「ねぇ、セバスちゃん。私の絵、どうかなぁ?」
カモミールティーを飲みながら、セバスちゃんに問いかける。
「とても綺麗だと思いますよ。
細かい描写は、その景色が本当に目の前にあるように感じられますし、
優しい色味で気持ちが温かくなります。」
「売れると思う?」
「もちろんです。
今はまだ駆け出しではありますが、誰かの目に留まればきっと気に入ってくれると思いますよ。」
すかさず質問を重ねる私に対して、セバスちゃんは迷う事なく答えてくれた。
その眼はとても優しくこちらを見て、本当にそう信じてくれているのだとわかる。
「うん。ありがとう。
セバスちゃんが言うと、何だか本当にそうなる気がするわ。
私、頑張るね!」
今までの不安な気持ちを取り除くように明るくそう言うと、セバスちゃんは笑顔を返してくれた。
カモミールティーを飲み干した私がうとうとと眠気と闘っていると、
ティーカップと交換で水の入ったグラスを渡された。
「お嬢様、そろそろお薬の時間です。」
私がうとうとしてくると、
セバスちゃんは決まってそう言って薬を渡して来る。
セバスちゃんから受け取った薬を飲むと、あっという間に夢の世界へとまどろんでいく。
「おやすみ、セバスちゃん。」
意識をほとんど手放した頭でようやく搾り出した言葉そう告げると、
「おやすみなさい」と返す声を聞いた気がした。
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