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食べないという選択肢を排除され、僕は仕方なく用意された食事を食べる。
当然残す事は許されない。
空になった食器をテーブルに置くと、
やつはそれを黙々と片付け始めた。
それから特にすることもないが、落ち着いて寝られる訳もなく、
僕はただベッドにゴロゴロしながら意味もなく時間を消費していた。
最初の頃は何とか脱出しようと試みた事もあったが、今ではすっかり諦めてしまった。
一度だけやつの隙をついて脱出に成功した事もあったが、やつを撒こうと躍起になっていた僕は、見るからにチンピラ風な男にぶつかってしまった。
そして危うく傷害事件が発生しそうになる事件があって以来、やつの警戒も厳しくなってしまった。
ドアにも鍵が取り付けられ、以前のように隙をついて逃げ出す手法はもう通用しなくなってしまった。
ちなみにどうやらここは高層マンションの一室らしく、地上までは最低でも20mはある。
窓からの脱出はまず不可能だろう。
そういえばこう言う時、最初の頃はやつが僕にやたらと話しかけて来た気がする。
僕の警戒を弱めさせて油断させたかったのか、それとも何らかの情報を引き出そうとしてたのかもしれない。
そんなものに騙されてたまるかと無視し続けていたら、そのうちやつは最低限の事以外は話さなくなった。
やつはーー正確にはやつの依頼主はと言うべきなのだろうーー僕を監禁するくせに、昼食時に怪しげな薬を飲ませる以外は、特に危害を加えてくる事はなかった。
そうしてこの無意味な時間は出来上がったのだった。
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