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虫下し(おくすり)
バキッ
「痛ってーな、何すんだよ!」
腕力が異常に強くなった朱美のパンチは、かなり効いたようだ。
「何笑ってんのよ! ふざけないでよ! 記憶なくして『戦う機械』とかになりたくないわよ。どうすれば良いの、この指輪外すの」
その間も、
「まあ、方法は二つある。ひとつは、左腕を切り落とすこと」
「は? ふざけんな!」
朱美は、再び拳を振り上げた。
「お、おい。ちょっと待て。これはマジだって。それに、もう一つあるって言っただろ、方法が」
「それを早く言いなさいよ。もう一つ、何よ」
「虫下しを手に入れることだな」
「虫下し? 何よそれ」
住留によると、あの紅蓮の指輪の赤い宝石の中には、細菌レベルの小さな虫の卵が無数に入っているという。人間がそれを嵌めると、卵が細胞内に侵入して孵化。そのまま、脳細胞に寄生して、食い荒らすようになるという。
「……やば。てか、マジなの、それ。超キモいんだけど」
「マジよマジ。超マジ。そして、それが指輪の秘密。で、その虫下しを持ってるのは」
住留は、ちょっとタメを作った。
「もったいぶらずに、早く言いなよ!」
「藍人だよ。お前の婚約者にして、我々シュメール人の末裔の影の支配者、縁利藍人だよ」
「やっぱり……。そういう展開ね。ていうか、あんたもシュメール人なんでしょ? なんでそれ持ってないのよ」
「あ、ああ。オレはシュメール人はシュメール人なんだけどさ、完全なシュメール人じゃないんだよね。いわば、アウトローっつーか」
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