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二人の指輪物語
はぁー。
朱美は、あからさまにため息をついた。
「使えない……。使えないわね、この男。ウエイターとしても使えなかったし、私のサポートとしても使えないわ」
「あ、そ。じゃあ、良いわ。記憶なくして、人間兵器になっちまえ!」
住留は、フンと、鼻を鳴らして下唇を出した。
慌てたのは朱美である。この時点で、すっかり立場が逆転している。
「わ、分かった。分かったわよ。ねえ、どうすれば良いの。彼に会って、虫下しちょうだいって言っても、絶対理解されないでしょ?」
「当然! あいつをぶん殴って、力づくで手に入れるしかないぜ」
「ぶん殴るって……。まるで強盗じゃない……」
「ああ、そうだよ。そうでもしなきゃ、あんな極悪非道の世界征服を目論むクズとは戦えないからな」
極悪非道、世界征服……。
こんなワードが並ぶ話が、自分の身に降りかかるとは、思わなかった。
「戦う? 冗談でしょ。私、ただの嫁入り前の26歳の女なんですけど……」
「冗談で、こんなこと言わないよ。嫌なら良いよ。じゃあ」
「分かった、分かったわ、やる、やるわよ!」
こうして、二人の「指輪物語」が幕を開けた。【完】
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