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MY TURN
「どうやら俺たちは、はめられたらしいな」
夜の闇が辺りを覆い尽くしている。
俺は茂みのある方に目を向けると喉を鳴らし、そう独りごちた。
風が吹き、葉が擦れる音がした。
それ以上に何も感じなければ、さぞかし風流な夜となっただろうが、あいにく俺には命懸けで生き抜いてきた者特有の嗅覚がある。
殺気のみなぎる闇に目を凝らした。
相手は、二人きりの俺たちが到底太刀打ちできるような数ではない。
脇で、姿勢を低くして構える弟分のタツにちらりと目をやり、俺は笑いかけた。
「タツ! またあの世で会おう!」
「兄貴!?」
「そうだな、どうせイクなら天国へ行こう! あばよ!」
俺はそう言って、怪我を負っている右手で彼の肩を後ろへ押しやった。
あいつが土の上に倒れ込むと同時に、前後左右で連続して閃光と共に破裂音がした。
四方八方から銃撃を受け、赤く飛沫きながら俺の身体が激しく踊る。
「兄貴!」
あいつが思わず伸ばした手も、あいつが最後に言った言葉も、俺にはもう届かない。
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