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HIS TURN
「さすがは兄貴!」
僕も思わず長老を真似てガッツポーズをした。
兄貴は、作戦行動の合間に気晴らしで競馬をすることがあったが、勝ち馬の半数近くを言い当てることができた。
戦闘と同じく勝負勘を必要とするだけに得意としたのかもしれない。
酒、女、博打は男の三大道楽といわれて久しいが、所変われば、瞬く間に叶えてしまう兄貴の姿に僕は感心しきりだった。
「戦争がなければ、兄貴も違う生き方があったろうに」
ここでの痛快な暮らしが、兄貴の暗く過酷だった人生を慰めるものであれば、と願うばかりである。
「それにしても兄貴、天国を満喫してるなあ」
老人がさらに笑い声を立てる。「ふぉーふぉっふぉっ!」
僕は尋ねた。
「何がそんなに可笑しいのですか」
「もう少し進めて、それを身をもって知ってもらいたいんじゃよ、わしは」
「俗っぽい欲を派手に満たしていることについてですか」
僕は、兄貴の経歴を知らない人間ならばそう思うだろうということを口にした。
「さあてな。わしはそもそも、人間の欲に高尚さなど、これっぽっちも期待しとらんが、な」
そこまで言うと老人はまた笑い始めた。
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