HIS TURN

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HIS TURN

 それが兄貴の最期であり、僕を庇おうとした兄貴には悪いが、僕のそれでもあった。  激しい痛みで、もはや口の中だけであったが、おそらく既に絶命したであろう兄貴に向かい、僕は地を這いながら言葉を手向けた。 「また天国で会いましょう」  僕が手を伸ばすと、兄貴のまだ温かく濡れた手に触れた。  駄目で元々握り返してくれるのを待つうちに、突然気が遠くなり視界が暗転した。
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