MY TURN

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MY TURN

 俺は「また後で来る」と言った彼女を見送ったあと、シャワーを浴びた。    なぜこんなにすんなり女たちが俺を受け入れるのか、不可解なままである。  記憶をたどれば、かつて一度だけ周りの複数の女に好意を打ち明けられたことがあったのを思い出す。  が、あれは確か俺が、女を見てもこのような行為を到底思いつかない幼稚園のころだった。  朝を共に過ごした女がまた夕方やってきた。 「ちょっと出掛けましょう」  彼女はそう言って、俺を小さな馬車に乗せて街に連れ出した。  古びてはいたが、遠浅の海沿いにある白壁の街は、ギリシアの町を思わせるような目を引く美しさをたたえている。  彼女は馬車を降りるとき、耳元をくすぐるような涼しげな声で、ここの酒場で街の重鎮である長老らと会わせたいと言った。  かくして向かうと、彼らは先に到着していた。  彼女が長老ら数人の男女に俺を紹介すると、彼らは一様に満面の笑顔を浮かべ、愉快そうに拍手した。  さっそく乾杯を交わすと、長老が酒を飲み干した俺の背中をうれしそうに叩き、満足そうにした。  酔いに任せて俺が何か言いかけると、そのたびに一同は被せるように大声で楽しそうに笑った。  彼らの反応がいちいちあまりに大げさなのに閉口して女を見ると、彼女も口許に手をあてながら、肩を揺らせて笑っていた。    
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