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MY TURN
夜が更けると、俺たちは小屋に戻りキスだけを交わして眠ったが、翌朝、またしても別の女がいて手を引かれるままベッドで過ごし、誘われるまま街へ出た。
カフェテリアには夕べの長老らのグループがいて、あいさつを交わした。
隣に別の女がいることを咎める者はいなかった。それがこの街では普通の光景であるかのように、彼らは悠然としていた。
互いに別々のテーブルにいたが、長老が新聞を広げてやって来た。
「これを見たまえ」
ひと目見て分かった。競馬の出走表である。
「どの馬が勝つか、予想してくれないか」
俺は、十数頭分の馬の過去の戦績を眺めたが、力のある馬は限られているようだった。
三強を見いだして伝えると、長老は白い歯を見せて、にやにやとした。
「さすがじゃの」
何をもってさすがなのか分からないが、よく分からず面倒なので、後は三頭のうち一番内枠にいる馬の名前を指さすと、彼は満足そうに頷いてテーブルに戻った。
それからカウンターにいる店員らしき男を呼び寄せて、耳打ちした。
「この馬に5000、賭けておいてくれ」
店員に馬券を買わせるらしい。
そのかわり手数料収入が店に入るのだろうが。
30分もすると、馬券を買いに出ていた店員が大きな袋を抱えて戻ってきた。
「やったな!」
店員が大きく頷くと長老は、両手を握ってガッツポーズをしてみせた。
俺の予想した馬が勝ったらしい。
長老は、二十数名の客で埋まる客席に向かって大きな声で言った。
「クロキさんの予想した馬が的中した! この場にいる皆全員にランチを奢るぞよ!」
店内は歓声で充たされ、大騒ぎとなった。
そして、店内にいる客たちが嬉々として、俺のテーブルに握手を求めて列を成した。
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