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#7  私たちはベンチに並び、向こう岸を見ながら座っていた。  不意にコウタ君が言った。 「パンダさんの声を聞いて、ちょっと思い出したこと、話していいですか」  空はライトブルーになり、夕陽はすでに落ちていた。  マジックアワー。  どこにも影ができない魔法の時間帯。  私の一番好きな時間だ。  コウタ君が話し出す。 「小学校の時ね、クラスに、ある女の子がいて、俺その子に実は片想いしてたんですよ。初恋ってやつ?」  その言葉に、私は当時のクラスメイトの女子の顔をぐるりと思い出す。コウタ君が好きだった女子の話なんてほんとは聞きたくなかったが、彼は私の思いをよそに続けた。 「彼女はいっつもひとりで本読んでるか、絵を描いていような子だった。そして何よりその子の声がすごく可愛いかった。ちょっと変わった声だったけど。好きだったんだよねぇ。パンダさんの声、その子にそっくりなんですよ。それで思い出しちゃって」  心臓が口から飛び出そうだ。  彼は続けた。 「中学になったら、絶対、告白しようと思ってたんだけど、その子とはついに再会できなかった。不登校って噂だったけどよくわかんない。だから、片思いで終わっちゃったって話です。初恋ってそんなもんなんでしょうね」  あまりの衝撃的な告白に、私は宇宙まで吹き飛ばされ、銀河系をひと回りし、またペンチに戻って来た。  宇宙は意外と、狭かった。 「野々宮佳穂ちゃん。その子の名前です。いまどうしてるんだろうなぁ」  泣きそうだった。  両思いだったとわかったのに、永遠に会えない。  全部全部全部、それは自分のせい。  こんなに近くにいるのに、私たちはあまりに遠い。
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