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#3  午後3時。  ついに、家を出た。  シャバの空気は美味えぜ、と言おうと決めていたが、発泡スチロールのニオイしかしなかった。  路地を抜け、大通りから歩道橋を渡り、小学生の頃よく行っていた商店街を歩く。  その時、幼い子どもの弾むよう声が聞こえた。 「パンダさんがいるよママ!」  3歳くらいの女の子とお母さんらしき人がこちらを見ているのが、メッシュの小さな穴から見えた。  女の子は、にこにこと嬉しそうに微笑み、パンダちゃんだー!と叫んだ。そして、一目散に走って近づいて来た。  私は女の子より、ママを見ていた。  あれから10年、大人になっていたし、化粧もしていたが、間違いない。   (和葉(かずは)ちゃん!)だ。  小学5年と6年、同じクラスだった、高津和葉(たかつかずは)ちゃんに間違いない。    反射的に私は逃げた。  着ぐるみを着ているから気づくはずもないが、それでも私の足は、脱兎のごとくふたりから走って逃げていた。
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