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午後3時。
ついに、家を出た。
シャバの空気は美味えぜ、と言おうと決めていたが、発泡スチロールのニオイしかしなかった。
路地を抜け、大通りから歩道橋を渡り、小学生の頃よく行っていた商店街を歩く。
その時、幼い子どもの弾むよう声が聞こえた。
「パンダさんがいるよママ!」
3歳くらいの女の子とお母さんらしき人がこちらを見ているのが、メッシュの小さな穴から見えた。
女の子は、にこにこと嬉しそうに微笑み、パンダちゃんだー!と叫んだ。そして、一目散に走って近づいて来た。
私は女の子より、ママを見ていた。
あれから10年、大人になっていたし、化粧もしていたが、間違いない。
(和葉ちゃん!)だ。
小学5年と6年、同じクラスだった、高津和葉ちゃんに間違いない。
反射的に私は逃げた。
着ぐるみを着ているから気づくはずもないが、それでも私の足は、脱兎のごとくふたりから走って逃げていた。
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