其ノ壱:百年後

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 桃太郎とて分かっていてショウマに乗せられるほど、おぼこくはない。ただ今回は常日頃から考えていることをショウマが口にしたことで、同意せずにはいられなかったのだ。  ――この百年、桃太郎は変わりゆくこの国を見てきた。  鬼退治直後は、人間たちも復興という目標に向けて一致団結していた。桃太郎は、その力強さに感銘を受けたものだった。身体にも心にも傷が残る最中、額に汗しながら豊かな生活を取り戻そうとする姿は美しかった。桃太郎は、心から鬼退治をして良かったと感じていた。  しかし十年もすると、同じ集落の中でも力関係というものが出来始めた。さらなる飛躍を求めて新天地を目指すものも現れた。要するに、人間たちは一枚岩ではなくなってきたのだ。  五十年も経つと、地方に別れていった人間たちが新たな集落を興し、それを国と称して他の国との争いを始めた。  奪われることの辛さを悲しみを最も知るはずの人間たちは、奪い合いに身を転じてしまったのである。  それから五十年、鬼退治から百年が経過した現在。  人と人の争いは、更に激化したと言っていい状況にあった。強さを求めるあまり、伝説の存在、いわば神に近い英雄の桃太郎にさえ、戦力として触手を伸ばす始末である。  桃太郎は、鬼退治をしたことで人の世が良くなったのか、疑問を感じ始めていた。自分のしたことは正しかったのか、自問自答をする日々だった。
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