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桃太郎が大きな溜め息で答えると、ヤイバは事も無げに発した。
「……鬼たちは、どんな色で生活してるのかなあ?」
「鬼の生活? とっくに滅んじまったんじゃねーかい」
ショウマがそう返すと、桃太郎もハッとしたように目を見開く。
「滅んでなかったとしたら……興味深いかも知れん」
「うんうん。ご主人は別に皆殺しにした訳じゃないし、鬼ヶ島で細々と生きてるような気がするよ」
「そうかねえ。皆殺しではないにせよ、桃さん相当に痛めつけたからなあ」
「……お前らさ、俺だけがやったんじゃないぞ? お前らだって鬼退治に行って、いいだけ暴れてただろうが」
「あは。僕が鬼に噛み付いたなんて記録はないよ」
「俺っちにも、鬼の目ン玉を引っ掻き回したなんて史実はないっすよ」
ヤイバとショウマが得意げに答えると、桃太郎は呆れたように頭を掻いた。
「……きったねえなあ」
「いいじゃあないっすか! 英雄も桃さん、汚れ役も桃さん!」
「そうだよ。実際バッサバッサ斬ったのはご主人だし」
桃太郎はジトッとした目で二匹を睨んだが、話を区切らんとばかりに一度大きく咳払いをした。
「とにかく、だ! 俺は興味が湧いたぜ。ここいらじゃあ鬼を見たなんて話はとんと聞かねえ。奴らは鬼ヶ島で生きているのか、生きているのならどんな生活をしてるのか!」
「うん、うん!」
「じゃあ、見に行っちゃいます!?」
「おうよ。桃太郎一行、久々の旅路と行こうじゃねえか!」
桃太郎が拳を差し出すと、ショウマが腕を伸ばしてその手を掴み、ヤイバは潜り込むようにして額をその拳にくっつけた。
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