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霊鳥・キサラには、桃太郎配下の中でも特に優れた特質技能があった。
それは『記憶』した場所へと瞬時に移動することが出来る異能であり、『記憶』さえしておけば、その地点を瞬時に往来可能となる破格の性能を誇る。
制限事項としては、覚えておけるが四箇所のみという点であり、それ以上覚えようとするならば、どこかに上書きする必要がある。
桃太郎一行の間では、分からなくならないように【上】【下】【左】【右】とそれぞれ呼ぶことにしていた。
「よし、取り敢えず【上】を『美作・俺の家』にした。全員把握しとけよ」
「はぁーい」
「承知っす」
「勿論よ」
返事をするや否や、キサラは元の巨鳥の姿へと変化して、その靭やかな首をもたげた。
「さあ、乗って」
「悪いな、宜しく頼む」
「キーちゃん、ありがと」
「クソ巨大チート雉女、ありがとよ」
「……ふうん」
桃太郎が背に跨り、その後ろにヤイバがちょこんと乗り付けると、キサラは身体をブルっと震わせて、ショウマだけを揺すり落とした。
「おわっ!? クソ雉、テメー何しやがる!」
「礼儀を知らない猿の乗り場は、そこじゃないわよ」
キサラはそう発すると、発達した鉤爪でガシッとショウマを掴み、そのまま大きく羽ばたいて、宙に浮かび上がった。
「おい! いや! 怖い怖い怖い!!! 指先の力加減でいくらでも落ちちゃうって! 背中に乗せろよ!」
「落ちたら何なの? さ、行くわよ!」
キサラは大きな羽を力強く動かし、風を切って飛び始める。
「いやっほーう!」
「よっしゃ、いざ鬼ヶ島へ!」
桃太郎とヤイバは遥か彼方、水平線の向こうを指差した。
「いやぁぁぁぁぁ!!! 怖いってぇぇぇぇぇl!!!」
「暴れると、うっかり落とすわよ?」
こうして桃太郎たちは、一路鬼ヶ島へと旅立って行った――。
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