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「わたし達に足りていなかったお薬は、安心できる環境、だったのかもしれません」
帰る場所がある、信頼できる人が居る、たったそれだけのこと。それだけのことが根無草となったわたし達にどれだけの幸せであったことか。
その幸せを知らなかったわたし達は他人を傷つけながらでしか存在出来ない病人だったのかもしれないのです。無自覚で、がむしゃらで、何かに苦しんでいるのにその苦しみの原因が何かわからないままの欠陥品だったのでしょう。
「やがてお前はこの村に居られなくなるんだぞ」
「それでも、この一時だけは安らぎの中に居たいんです」
いつかわたしは成長しない身体を怪しまれ、この地を離れることになるでしょう。その時はきっとご主人様も。けれど、ここで得た経験は忘れない、そんな予感がしました。
「ん? そういえばわたしが眠る前にグラビア書物がどうとか言ってました?」
「あぁ、順調な売れ行きだ。闇ルートで捌くだけの価値がある。その内第二弾も発売してディクセンに知られていないタンス預金にしよう」
「......。ご主人様ーーーー! 改心してください!」
永遠のないこの世界を生きるために今できることを抱きしめて。
おわり
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