訃報

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 学校から、ニブの死因は自殺と発表された。ダンスパーティーは中止となり、カウンセラーを呼んで、命の大切さを学ぶ全校集会が開かれた。 「悩みがあれば、必ず相談してください」「命の電話は365日24時間で相談できます」「命のラインを開設しました、個人情報は、学校にも知らされません」  学校長や教師たちは沈痛な面持ちで聞き入っている。  キヌアは、冷めた目で周囲を見ていた。 (あほくさ……)  ほとんどの生徒たちの関心事は、ダンスパーティーであり、中止となったことを残念がった。  そっちで泣いている生徒までいて、アマニは、何が正しいのか全く分からなくなる。  次は校長の話だ。 「今日の授業はありません。寄り道せず真っ直ぐ帰ること。帰ったら家の人に帰宅を知らせてください。皆さんのご家族は、皆さんの身をとても案じています。毎日ご両親と話してください」    くどくて長い話の後、集会が終了した。  アマニが教室に戻る途中、笛野スピアが近づいてきて、通り過ぎざまに「ダンスパーティーを中止にして、ホントにいい迷惑。不快なだけの存在なんて、いなくていい。消えて良かった」と、耳元でボソッと言った。  どうしてそんなことが言えるのか、その心理がアマニには全く理解できない。 「そんなこと言わなくても!」  友人を侮辱されてさすがに我慢できず、思わず大きな声を出した。  スピアは知らん顔で去っていき、仲間たちと合流した。 「何か言ったの?」 「別に。親友が亡くなって、変になっているんじゃない? 近づかない方がいいわよ。難癖付けられるから」 「おー、こわ!」  数人がアマニを見て含み笑いをしている。  言いたい放題。追いかけて言い返してやろうかとアマニが考えていると、キヌアがやってきて止められた。 「相手にしない方がいいわ」 「キヌア……」 「分かってくれる人だけを相手にすればいいのよ」  キヌアの強さがありがたい。心強い味方を得て、アマニは少し落ち着いた。 「そうよね。同じレベルになることないか」 「そうそう」 「あの人たち、いつもこうやってニブを苛めていたのかな」 「そうかも。私も気づいてあげられなくて、申し訳なかったと思う」 「キヌア、せめて私たちだけでも、心からニブに謝罪しましょう」 「そうね……」  キヌアの優しさが身に沁みる。  朝居糀がやってきた。 「あいつら、腹立つな」 「今の、聴こえていた?」 「聴こえてこなくても、意図はちゃんと伝わる。侮辱されたんだろ? 本当に許せない。でも、僕がダンスパートナーに選んだことで迷惑を掛けたのだとしたら、僕も同罪だな」 「朝居君は関係ないわよ。でも、ありがとう」  朝居が自責の念にかられていたことに、アマニは驚いた。これ以上、ニブの死で苦しむ人が出て欲しくない。 「なあ、真相を僕たちで調べてみないか?」 「真相?」 「もし苛めが原因だったとしたら、それはもう殺人と同じだと思うんだ」  そうとも言えると、アマニも同意した。 「そうよね。私も知りたい。しっかり調べて、ニブの気持ちを知りたい」 「決まりだな」  キヌアは、二人の間でドンドン話が進んでいくのを傍らで唖然としながら見ていた。  二人で一体何を話し合うのか気になって、自分も参加を表明した。 「私も行くわ」 「いいよ。放課後、三人で集まろう」 「どこでする?」 「丁度いいところがある。案内するから、校門で待ち合わせよう」  いくら学校から寄り道禁止と言われたところで、大人しく従っている場合ではない。  帰りに三人で待ち合わせた。
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