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叔父さんの店で
朝居に連れられてやってきたのは、海岸線と白い砂浜が目の前に広がる、ログハウス風の小さなカフェだった。入口横には、カラフルなサーフボードが数枚立てかけてある。それだけで、サーファー向けだと分かる。
アマニとキヌアは、目を丸くした。
「ここで作戦会議するの?」
「そう。ここはマグロカツバーガーが名物でさ、それが目的でやってくる客が多いんだ」
「いえ、そんなことじゃなくて。私たち、制服だし、場違いよ」
アマニが困り顔で言う。
「いいの、いいの。ここは、僕の叔父さんのお店。何にも気にしなくていいんだよ」
「だとしても、お金をそんなに持っていないんだけど」
「叔父さんがご馳走してくれるさ」
「それは悪いわ」
「その分、僕が皿洗いするから」
「ますます、悪いじゃない」
遠慮しているアマニとは対照的に、キヌアは入る気満々だ。
「ここまで来たんだし、せっかくだから、入ろうよ」
キアヌがアマニの背中を押して、中に入った。
「いらっしゃい」
カウンターに長身長髪で顎髭が長めのよく日焼けした男性が立っている。
「叔父さん、こんにちは!」
「おお、糀君か」
朝居の親戚らしい。いかにもサーファーっぽく、言われてみれば朝居とよく似ている。
叔父は、甥が連れてきた美少女二人に驚き、すぐ笑顔になって歓迎した。
「糀君、やるなあ!」
「やめてくれよ、叔父さん」
少なくとも嫌がられていない様子に、アマニはようやく安心した。
隅のテーブルに座ると、朝居が「マグロカツバーガー三人前!」と、勝手に注文した。
「朝居君、私たち、食べるなんて一言も言っていないけど」
「腹が減っていたら、頭も動かないだろ」
「確かにそうだけど」
アマニは、飲み物程度だと思っていたから、恐縮した。
キヌアは、「折角だから御馳走になろうよ」と悪びれない。
「鬼怒川さんは、迷いがなくて、気持ちいいね」
なぜかキヌアが褒められる。
「これからは、君たちをアマニ、キヌアと呼んでいい?」
「ええ」
「勿論」
「僕のことは、アサイでいいよ」
アサイは、二人に向けて白い歯をキラリと輝かせる。嫌味がなくて、実に爽やかだ。それを見たアマニは、恥ずかしくなった。
(……)
キヌアがそんなアマニを観察している。
「アマニにアサイ、そして私がキヌア。これで新生スーパーフードが揃ったわね」
「スーパーフード?」
「そうよ。私たちの呼び名は、スーパーフードに掛けていたの。知らなかった? 偶然、アサイもスーパーフードだしね」
「スーパーフードって、何?」
アサイは、氏名をもじった、ただのニックネームだと思っていた。
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