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録音
「腹ごしらえもしたことだし、始めるか」
「でも、私たちに何が出来るんだろう。何をどうすればいいのか、さっぱり思いつかない」
アマニが悩んでいると、アサイが手助けした。
「手始めに、最後に見たニブについて一人ずつ話していくってのはどう? 最後に話したのはいつで、どんな内容だったか、三人の情報が集まれば、何か見えてくるかもしれない」
キヌアは、ややピリピリしていた。アサイが何か知っているように見えてくる。喋り過ぎて疑われないよう、より慎重になる必要があるだろう。
「誰から話す?」
アマニが小さく手を挙げた。
「私から。多分、最後に会って話したのが私だと思うから」
「じゃあ、頼むよ。内容を記録するね」
アサイは、手元を動かしてスマートフォンのアプリを準備する。
「それ、録音のアプリだよね?」
「ああ。後で検証するのに役立つから」
「なんか、緊張するわ」
検証と聞いたキヌアの頭に血が上った。
「ちょっと、待って! さすがに気分が悪いんだけど!」
「なんで?」
アマニもアサイも、キヌアの剣幕に驚いた。
「私たちの声を録音することに、なんの意味があるのよ。まるで私たちの中に犯人がいるみたいじゃない」
「いや、最後の様子をまとめて、ご遺族に伝えられたらなって……」
「それなら、直接口で伝えればいいでしょ! アマニも何か言って!」
「え……と」
板挟み状態になったアマニが一番困っている。
叔父が何事かとこちらを見ている。
「糀君、どうした?」
「何でもありません。騒いですみません」
店から追い出されたくないアサイは、録音をとりやめた。
「分かった。確かにやり過ぎだったかもしれない。要点をメモするってことでいい?」
キヌアも言い過ぎたと反省した。強硬に反対を続けては怪しまれてしまう。ここは自制して、言葉を柔らかくすることにした。
「メモなら、まあいいわ」
アサイは、スマートフォンのメモ機能を立ち上げた。
――アマニの証言
「アマニ、いいよ。話して」
アマニは、「フウ」と、一呼吸置くと、思い出しつつ話した。
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