LAST・DAY 犬系彼氏・犬飼くん

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LAST・DAY 犬系彼氏・犬飼くん

「犬飼くん!!!」 あたしは、もう、犬飼くんと別れようと決心した。 そのあたしに向かって、犬飼くんが言った。 「そのサクラサクラっていう名前は、誰が付けたの?」 「えっ?」 あたしは、勢いをそがれた。 「え、お父さんだけど……。お母さんと出会ったのが、桜の花見の時で、お母さんが、すごく綺麗だったからって……娘が生まれたら『さくら』って付けようと決めてたって……」 「ふうん……。素敵なお父さんだね」 「え?」 「サクラサクラなんて普通付けないよ。でも、それだけ、思い入れがあったんだね……。ごめん! 笑ったりして」 犬飼くんが、真面目な顔をして、謝った。 あたしはびっくりした。 犬飼くんの辞書には「反省」の文字はないはずだった。 「オレさ、なんか、大雑把すぎるって、自分でも思うんだけど、止められなくて……でも、そんなオレと付き会ってくれてる、佐倉さんには、感謝してるから……それで……」 犬飼くんの顔が真っ赤になった。 「だ、大好きだから! 君のこと。名前ごと!」 「えっ?」 あたしは、この大型犬男子の犬飼くんが、そこまで考えているとは、思いもしなかった。 「オレ、自由過ぎて、人のことを思いやれないところがあるけど、佐倉さんのことは、大好きだから、大事にする!」 「犬飼くん……」 あたしは、何だか、泣けてきた。 「あたしも、犬飼くんのことが好き……」 あたしがそう、泣きながら言うと、犬飼くんは、微笑んだ。 「ありがとう。今度さ、ちゃんと彼女として、家族に紹介したいから、家に来てよ」 「うん……」 そう、あたしは返事をしたものの、あの豪快なお母さんと、〇ゲで、酔っ払うと裸になるお父さんと、お兄さんの柴犬に、挨拶するのか……、と思うと、なんだか、緊張してしまった。 しかし、今の犬飼くんがあるのは、この家族のお陰なのだ。 「気楽に来てよ。それから、今週末は、またデートしようよ。今度は、オレ、佐倉さんのボディガードになって、守るから」 犬飼くんは、そう言って無邪気に笑った。 あたしは、その犬飼くんを見て、思った。 「犬系彼氏、やっぱり大好きだ!」 「犬系彼氏」 おわり f1f00bbe-6a44-4732-97d2-720655363675
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