犬飼くんとジェットコースター

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犬飼くんとジェットコースター

あたしは、デートで入ったカフェで、フレンチトーストを知らなかった犬飼くんに、驚いたけれど、やはり「犬飼くんだからな……」と納得して、次のデートコースへ向かうことにした。 次は、デートの定番、遊園地だ。 犬飼くんは、遊園地に着くと、異様にテンションが上がった。 「ジェットコースター! ジェットコースター乗ろうぜ! オレ、子供の頃から、ジェットコースターが大好きなんだ!」 あたしは、正直、ジェットコースターは苦手だ。 ふと、犬飼くんが、真面目な顔になった。 「どうしたの?」 あたしは訊いた。 「うん……。そう言えばさ、小学生の二年の時、初めて、一人でジェットコースターに乗ったんだ」 「うん」 「そしたらさ、一番後ろに乗ったら、オレの姿に係員の人が気付かなかったらしくてさ」 「う、うん」 「あのハーネス? シートベルトみたいなやつ……」 「う、うん」 「あれを、オレに付けるのを忘れて、ジェットコースターが動き出してさ」 「ええっ?!」 「オレも、さすがに怖かったんだけど……」 「えっ?! 止まらなかったの?! 大丈夫だったの?!」 「うん。最後まで何ともなかった。ちょっとスリル満点だったけど」 「そ、そんなことあるんだね……。無事でよかったね……」 「ああ。でもさ、思ったよ、あのハーネスって、見せかけなんだなって。ジェットコースターなんて、座ってるだけで大丈夫なもんなんだよ」 「はあ……そうなの……」 「そうだぜ。さあ、乗りまくろうぜ、ジェットコースター!!!」 そう犬飼くんは、言って、スキップしながら、乗り場に向かった。 あたしなら、トラウマになりそうなことも、犬飼くんはポジティブ過ぎて、トラウマとは無縁なのだった……。 0b8dbc85-7053-408c-b9f8-643938b91ee4
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