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「ねぇ、伊桜莉。どうして学校に行かないの?」
だって行きたくないの。
「……クラスの子に嫌なことでもされたの?」
別に何もされてないし、いじめとかもないよ。ただ、私が学校を嫌になっただけ。
「もう……言ってくれなきゃ、お母さん何もわからないわ」
わかってもらおうなんて思ってない。だから言わない。
「どうしてこの子は……お兄ちゃんとは大違い」
知ってる。だからお母さんは明るくて素直なお兄ちゃんが好きで、私のことは――嫌いなんでしょ。
心の中で思っていることがお母さんに伝わることはない。だから、ずっと黙っていた私に背を向けてお母さんが部屋から出ていった。
がらんとした私の部屋。5年生になってお兄ちゃんと部屋が分かれた。もらったこの部屋は、私1人には少し広い。
お母さんの趣味のピンクの可愛らしいカーテンに、白い布団カバーがかけられたベッド。勉強机はお兄ちゃんとおそろいの色違い。私の部屋なのに、私が選んだものは1つもない。
床の上で大の字に寝転がった。指先に当たった学校支給のタブレットにはやりかけの宿題。学校にいかなくても勉強はどこでもできる。
それなのに、学校に行く意味ってあるのかな。
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