1.水無川小学校の七不思議

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「ねぇ、伊桜莉(いおり)。どうして学校に行かないの?」  だって行きたくないの。 「……クラスの子に嫌なことでもされたの?」  別に何もされてないし、いじめとかもないよ。ただ、私が学校を嫌になっただけ。 「もう……言ってくれなきゃ、お母さん何もわからないわ」  わかってもらおうなんて思ってない。だから言わない。 「どうしてこの子は……お兄ちゃんとは大違い」  知ってる。だからお母さんは明るくて素直なお兄ちゃんが好きで、私のことは――嫌いなんでしょ。  心の中で思っていることがお母さんに伝わることはない。だから、ずっと黙っていた私に背を向けてお母さんが部屋から出ていった。  がらんとした私の部屋。5年生になってお兄ちゃんと部屋が分かれた。もらったこの部屋は、私1人には少し広い。  お母さんの趣味のピンクの可愛らしいカーテンに、白い布団カバーがかけられたベッド。勉強机はお兄ちゃんとおそろいの色違い。私の部屋なのに、私が選んだものは1つもない。  床の上で大の字に寝転がった。指先に当たった学校支給のタブレットにはやりかけの宿題。学校にいかなくても勉強はどこでもできる。  それなのに、学校に行く意味ってあるのかな。
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