2.罪悪感

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2.罪悪感

 ガラガラガラッ。  担任の広野先生が、六年一組の教室の扉を勢いよく開けて先に中へ入ると、「さあ、早く席に着けよー」と声をかける。  そんな先生のあとに続いて、おそるおそるわたしも教室へと足を踏み入れると、みんなの視線が一気にわたしに集まった。  でも、正直前の学校ほど怖くない。だって、わたしに向けられた目の数は、とっても少なかったから。  六年生は、わたし以外に四人しかいないって聞いていた……んだ、け、ど……。  ウソでしょ。わたし以外、全員男子なの⁉  思わぬ事態に、教室に一歩入ったところで固まっていると、広野先生がわたしの方を見た。 「ほら、誰も取って食ったりしないから、もっとこっちにおいで。教卓の前に立って、とりあえずみんなに自己紹介な」  広野先生に促され、おそるおそる教卓の前に立つと、また一斉にみんなの視線が集まった。 「……杉崎日菜です。新前市の南里小学校から来ました。よろしくおねがいします」  何度も何度も家で練習してきたけど、本番はやっぱり緊張する。  だいたい、クラスメイトが全員男子だなんて、聞いてないし。 「えっと……お父さんとお母さんがお仕事でいない間、盛田屋をやっているおばあちゃんちに住むことになりました」 「盛田屋⁉ うわっ、めっちゃいいじゃん。駄菓子食べ放題」  廊下側のうしろの席の、体の大きな男子――神谷武流くんが、うらやましそうな顔をする。 「う、売り物は勝手に食べられないからっ」  盛田屋っていうのは、おばあちゃんがやっている駄菓子屋さんの名前。  多分、この小学校に通っている子で、知らない子はいないんじゃないかなぁ。  毎日学校が終わると、おこづかいを握りしめて大勢の子どもたちが買いにくるんだって。  だから「一人暮らしでも全然寂しくないんだよ」って、おばあちゃんが前に言っていたっけ。
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