2.罪悪感

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「ってことは、俊哉と親戚なんだ。俊哉も盛田屋さんとこの遠い親戚だって言ってたよね?」  そう言いながら、神谷くんの前の席の相沢悠宇くんが、わたしたちを見比べる。  すらっと背が高くて、落ち着いた雰囲気の男の子。  女子がいたら、きっとモテそうなタイプだ。 「シンセキ? シンセキっていうか、オレのよ……」 「そう! 俊哉くんとは遠い遠い親戚なの」  今、さっそく余計なことを言おうとしたでしょ!  窓ぎわの一番前の席の俊哉くんを無言でにらみつけると、わたしの怒りを察した様子の俊哉くんが思いっきり縮こまる。  もうっ、油断も隙もあったもんじゃないんだから。 「杉崎の席は、そこの空いてるとこな。じゃあ、さっそく朝のホームルームをはじめるぞー」  空いてる席――相沢くんと俊哉くんの間の、教卓の真ん前。居眠りなんか絶対にできない席だ。  いや、この人数なら、どこで寝たってバレバレだろうけど。  自分の席に座りながら、わたしが教室に来てからまだひと言も言葉を発していない、窓ぎわのうしろの席の男の子――渡瀬遼馬くんの様子をそっとうかがった。  転校生になんか興味なさそうに、メガネの奥の瞳で窓の外をぼーっと眺めている。   四人とも、全然タイプのちがう男の子たちだ。  俊哉くんは、今年の一月からここの学校に通っているらしいんだけど、みんなは俊哉くんがキツネだってことを知らないんだよね?  ここで勝手に俊哉くんのヒミツをバラすのは、フェアじゃないってわかってる。  わたしだって、俊哉くんをむやみに傷つけたいわけじゃないし。  けど、みんなをダマしてることに、罪悪感はないの?  わたしだって……勝手にみんなの心の声を聞いてしまわないように、できるだけ他の子とは距離を取るようにしているのに。
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