2.罪悪感

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***  始業式のあとの休み時間。  えーっと、トイレはたしかこっちだったはず。  きょろきょろあたりを見回しながら、教室を出て左の方へと進んでいき、『女子便所』というプレートを確認する。  扉に手をかけようとした、ちょうどそのとき――。 「うわっ! ごめんなさい」  勢いよく扉が開いて、出てきた誰かとぶつかりそうになり、反射的に謝りながらぺこりと頭をさげた。  もう、今日はこんなのばっかだよ。 「こっちこそごめんね、日菜。大丈夫だった?」 「はい、大丈夫で……あ、相沢くん⁉」  ぶつかりそうになった相手の顔を見あげてから、さっき確認したばかりの『女子便所』のプレートを確認する。  わたし、間違えてないよね?  っていうことは……。 「よかったら悠宇って呼んで。うちのクラス、一年からずっと男子ばっかだったからさ。転校生が日菜で本当によかった」  そう言って、ほがらかに笑う――。 「悠宇……ちゃん?」 「まあ、それでもいいけど。なんだか慣れないな。みんなには『悠宇』ってずっと呼び捨てにされてたから」 「ごめんなさいっ。わたし……」  途中まで言いかけて、わたしは言葉を飲み込んだ。  いや別に正直に言う必要ないよね? 男の子だって勘ちがいしていたなんて。 「ああ。あたしお兄ちゃんのおさがりばっか着てるからさ。よく男子と間違えられるんだよね。別に気にしてないから、日菜も気にしないで」  うぅっ、間違えてたこと、思いっきりバレてるし。 「ご、ごめんね!」 「あはっ。日菜ってば、正直すぎー」  そう言って笑いとばしてくれる悠宇ちゃんは、やっぱり誰がなんといってもカッコいい女の子だよ。
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