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始業式のあとの休み時間。
えーっと、トイレはたしかこっちだったはず。
きょろきょろあたりを見回しながら、教室を出て左の方へと進んでいき、『女子便所』というプレートを確認する。
扉に手をかけようとした、ちょうどそのとき――。
「うわっ! ごめんなさい」
勢いよく扉が開いて、出てきた誰かとぶつかりそうになり、反射的に謝りながらぺこりと頭をさげた。
もう、今日はこんなのばっかだよ。
「こっちこそごめんね、日菜。大丈夫だった?」
「はい、大丈夫で……あ、相沢くん⁉」
ぶつかりそうになった相手の顔を見あげてから、さっき確認したばかりの『女子便所』のプレートを確認する。
わたし、間違えてないよね?
っていうことは……。
「よかったら悠宇って呼んで。うちのクラス、一年からずっと男子ばっかだったからさ。転校生が日菜で本当によかった」
そう言って、ほがらかに笑う――。
「悠宇……ちゃん?」
「まあ、それでもいいけど。なんだか慣れないな。みんなには『悠宇』ってずっと呼び捨てにされてたから」
「ごめんなさいっ。わたし……」
途中まで言いかけて、わたしは言葉を飲み込んだ。
いや別に正直に言う必要ないよね? 男の子だって勘ちがいしていたなんて。
「ああ。あたしお兄ちゃんのおさがりばっか着てるからさ。よく男子と間違えられるんだよね。別に気にしてないから、日菜も気にしないで」
うぅっ、間違えてたこと、思いっきりバレてるし。
「ご、ごめんね!」
「あはっ。日菜ってば、正直すぎー」
そう言って笑いとばしてくれる悠宇ちゃんは、やっぱり誰がなんといってもカッコいい女の子だよ。
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