2.罪悪感

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(こういうカッコいい服も好きだけど、たまにはあたしだって、もっとかわいい服が着てみたいんだよねー。ま、絶対似合わないって武流に笑われるのがオチだけどさ)  悠宇ちゃんの、意外なほど寂しげな心の声が聞こえてきた。  悠宇ちゃん……。 「悠宇ちゃん、モデルさんみたいにすらっとしてるから、きっと似合うと思うよ! あーでも、かわいいのもいいけど、キレイ系の服も似合うかも」 「え?」 (あたし、頭の中で考えてただけのつもりだったけど、ひょっとして声に出てた?) 「ご、ごめんね。なんでもないよ。気にしないで」  引きつった笑みを貼りつかせたまま、わたしは慌ててトイレの中に逃げ込んだ。  ……完全に油断してた。思わず心の声に反応しちゃったよ。  でも、悠宇ちゃんがモデルさんみたいにスタイルがいいなって思ったのは本当のことで。  たとえば、パフスリーブのブラウスとビスチェでトップスは甘めにして、ボトムスはタイトなパンツでスッキリさせて……突然描きたい欲がむくむくと湧いてきた。  ささっとトイレを済まして教室に戻ると、小ぶりのスケッチブックをカバンから引っ張り出して、さらさらと絵を描いていく。  うん、やっぱり悠宇ちゃんのイメージにピッタリ。  このスケッチブックはね、「お父さんたちがいない一年間、これでたくさん絵の練習をするんだよ」っていって、おばあちゃんちに来る前にお父さんがくれたんだ。  離れていても『がんばれ』って応援してくれているような、なんていうか、わたしの御守りみたいなもの。
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