3.だから!

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 お互いの似顔絵を描いてみようっていうことになって、わたしたちは居間のちゃぶ台のところに向かいあって座った。  ふぅん、俊哉くんって、意外とキリッとしたつり目なんだなー。  鼻は意外と高くって、唇は薄め。  あっ。頭のてっぺんの毛が、寝ぐせなのかちょっと立っている。  顔の輪郭をざっと取ってから、俊哉くんの顔の特徴を細かく描き入れていく。  夢中になって描き続けること二十分。  あ。そういえば、俊哉くんは大丈夫かな?  一緒に描いていたことをすっかり忘れちゃうほど集中してた。  ちらっと俊哉くんの様子をうかがうと、ささっと鉛筆を走らせては、バリバリと頭をかいて。  もう一度鉛筆を走らせてから、消しゴムでゴシゴシ消す――の繰り返し。  いきなり人間の顔を描くのは、さすがに難しすぎたかなぁ。 「俊哉くん、どう?」 「ああ……うん、まあ……」 「よく見て、見える通りに描けばいいんだよ」 「……うん……」  さっきまでの元気はどこにいっちゃったのか、全然返事に元気がない。  眉間にシワを寄せて、ものすごく難しい顔でノートに向かっている。  ……こういう表情をじーっと見ながら描く練習なんて、なかなかできないしなぁ。  申し訳ないと思いつつも、チャンスとばかりに、どんどん鉛筆を走らせる。
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