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「日菜、そろそろ学校に行くぞ」
「日菜、次は音楽室に移動な」
「日菜、今日の体育は体育館だってさ。着替えたら一緒に行こ」
学校がはじまって数日。
なんだか一日中俊哉くんにべったり貼りつかれている感じで、正直だんだん疲れてきちゃった……。
今も、理科室に行こうと思って教室を一人で出たら、俊哉くんが慌てて追いかけてきた。
前の学校では、通学も教室移動もいつだって一人だった。
寂しいなって思うことがなかったわけじゃないけど、一人って気楽だったなーって、今になって思う。
「もう特別教室の場所は全部覚えたから、一人で行けるよ」って言っても、「オレも一緒に行ったっていーじゃん」って言って全然聞いてくれないし。
しかも、ちょっと油断してるとすぐに「だってさ、日菜はオレの……」って言いだすんだから。
「わたしは俊哉くんの嫁にはならないし、学校で絶対ヘンなことを言わないでよ⁉」って何度も何度も言ってるのに。
それにね。『オレの嫁』ってみんなの前で言われるのも困るけど、これ以上みんなの心の声を聞きたくないの。
だから、一人にしてほしい。
俊哉くんは、思ったことをすぐ口にするタイプなのか、あんまり心の声は聞こえてこないんだよね。裏表がないっていうのかなぁ。
心の声が強く聞こえてくるときって、口とは反対のことを考えている場合が多くって。
そういうときに限って、聞きたくない言葉がどんどん頭の中に流れ込んできちゃうんだよね。
『え? じゃあ、俊哉くんならそばにいたって問題ないんじゃない?』って?
問題大アリだよ! だって――。
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