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「わたしは、わたしのことをちゃんと好きでいてくれる人としか、したくないの」
「じゃあ、オレがちゃんと日菜のことが好きだって証明できればいいってこと?」
「証明するとか、そういうことじゃなくて。ちゃんとお互いの心がつながってなきゃいけないっていうか……とにかく片方じゃダメなんだってば」
恋をしたこともない人に、そんな難しいことを聞かないでよ!
「そもそも人間は、十八歳にならないと結婚できないの。だから、そんなずっと先のことなんてまだ考えられないよ」
「……」
(オレ……家族がほしいだけなのに)
「え……?」
「ごめん。そうだよな。人間には人間の都合ってもんがあるもんな」
寂しそうに笑うと、「オレ、ちょっとトイレに寄ってから理科室行くわ」と言って、行ってしまった。
……そうだ。
最初の頃は疑問に思っていたけど、すっかり忘れてた。
俊哉くんは、どうしてわたしのおばあちゃんと暮らしているんだろう? ってこと。
俊哉くんの家族は?
お父さんとお母さんは?
俊哉くんが全然帰ってこなかったら、心配してるんじゃないの?
それとも……。
さっきの俊哉くんの、心の声。
『家族がほしいだけなのに』って。
ひょっとして……。
だからなの?
わたしが廊下に立ち尽くしていると、たったったっと軽快な足音が近づいてきた。
「わかったよ、日菜。だったら十八歳になるまで待てばいいってことなんだな!」
「えぇっ⁉ わたしそんなこと……」
「なあんだ。そっか、そっか」
ほんとにもうっ。わたしの話、全然理解してないんだから。
でも、そうやってうれしそうに笑う俊哉くんを見ていたら、気づいたらわたしまで笑顔になっていた。
そんな人とずっと一緒にいられたら、それってすっごく幸せなことなのかも……なんて考える自分にハッと気づいて、ぶんぶんと首を横に振る。
いや、だからって俊哉くんの嫁にはならないけどね⁉
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