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4.新月
「おばあちゃん、おはよう」
「おはよう、日菜。そうだ。俊哉くん、まだ起きてきていないみたいだから、ちょっと行って起こしてきてくれる?」
「はぁい」
珍しい。いつもわたしよりずっと早く起きているみたいなのに。
ひょっとして、体調でも悪いのかなぁ?
二階に戻って、わたしの隣の部屋のドアをコンコンコンとノックする。
「俊哉くん。朝だよ。起きてる? 早く朝ごはん食べないと、学校に遅刻しちゃうよ」
返事がなくて、もう一度、今度はもう少し大きめの声で呼びかけてみたけど、やっぱり返事がない。
ひょっとして、高熱で倒れてたりしないよね?
心配で心臓がドキドキしてきた。
「ねえ、大丈夫? ここ、開けるよ?」
そう断りながら、ぐっとドアを押してみる。
けど、なにかがつかえているみたいで、ドアが開けられない。
「え、俊哉くん⁉ ねえ、大丈夫?」
まさかだけど、ドアのすぐ前で倒れていたり……。
(ダメ! おねがいだから、開けないで)
俊哉くんの、心の叫びが聞こえてくる。
「俊哉……くん?」
(日菜にだけは、絶対に見られたくないんだ……。返事もできなくて、ごめんな)
「ごめんね、日菜。やっぱり俊哉くんは、起こさなくて大丈夫だから。今日は学校をお休みするって、先生に伝えておいてもらえる?」
おばあちゃんが、わたしの肩をそっと抱くと、俊哉くんの部屋の前を離れるよう促した。
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