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1.聞いてない!
「おばあちゃん。えっと……一年間、よろしくおねがいしますっ」
最寄り駅までお迎えにきてくれたおばあちゃんに向かって、ぺこっと頭をさげると、
「よく来たね。待ってたよ」
と言って、おばあちゃんが、にっこり笑ってくれた。
ランドセルとか、その他諸々の持ち物は、今日の夕方に宅配便で届くことになっている。
わたしの荷物は、昨年林間学校用に買ってもらった大きめの旅行カバンだけ。
中には、今朝まで使っていたパジャマや歯ブラシ、それに絶対になくしたくない大切なものだけを詰めて持ってきた。
実はね、小六の一年間、わたしはおばあちゃんちで暮らすことになったんだ。
画家のお父さんが、外国を周りながら絵を描く旅に出ることになって。いつも絵を描きはじめると、ごはんを食べるのも忘れちゃうくらい熱中してしまうお父さんのことを心配したお母さんも、お父さんの旅についていくことになったの。
わたしもついてくるかって聞かれたんだけど、慣れない土地で、それもあちこちの国を転々としながら暮らすなんて全然想像できなくて。お父さんたちが旅に出ている間の一年間、わたしはおばあちゃんちにお世話になることにしたんだ。
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