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「ただいまー」
おばあちゃんが、誰もいないはずの家の中に声をかけると、だだだだっと元気な足音が近づいてきた。
ウソ。誰かいるの⁉
おじいちゃんは数年前に病気で亡くなっていて、おばあちゃんは一人暮らしのはずなのに。
「おかえり、おばちゃん! 日菜も、おかえり!」
満面の笑みでわたしを出迎えてくれたのは、わたしと同じかちょっと小さいくらいの元気な男の子。
赤茶色のさらさらの髪に、切れ長で黒目がちな目が印象的。
目鼻立ちが整っていて、一瞬芸能人かと思っちゃうくらいキレイな男の子だ。
誰なんだろう? 近所の子⁇
東京でバリバリ働いているお母さんのお姉さんは、たしかまだ結婚していないはずだから、いとこっていう可能性はゼロ……のはず。
「そういえば、日菜にはまだ言ってなかったわね。この子は本山俊哉くん。ちょっと事情があって、今、おばあちゃんちで一緒に暮らしているの。仲よくしてあげてね」
ちょっと待って。こんなの聞いてないよ! おばあちゃんちに知らない男の子が住んでいるなんて。
おばあちゃんと二人暮らしなら、お父さんたちと一緒に外国に行くよりずっといいと思って、日本に残るって決めたのに。
「おばちゃん、オレ決めた。日菜をオレの嫁にする」
目をキラキラ輝かせながら俊哉くんがそう言うと、わたしの隣に立つおばあちゃんが「あらまあ!」と左手を口に当てた。
……は?
よめにする……読めにする……? 嫁にする……?
嫁にする⁉
はじめて会って、まだ一分くらいしか経ってないよね⁇
なに言ってるの、この子‼
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