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洗面所の扉に手をかけ、ガラガラッと横に引くと、思った以上に軽く開いて、そのまま前のめりになった瞬間——。
ごっちん!
目の前に、火花が散った。
「「いったたたたた……」」
おでこを両手で押さえてその場にしゃがみ込むと、洗面所からちょうど同じタイミングで扉を開けて出てこようとしていたらしい俊哉くんの声とシンクロする。
そのままおでこを押さえて痛みに耐えていたら、
「あ、やべっ」
という俊哉くんのつぶやきが聞こえた。
「どうしたの?」
おでこを押さえたまま俊哉くんの方を見ようとして——視線がある一点に釘づけになった。
床の上で、ふさぁ、ふさぁと優雅に揺れるしっぽは、どう見てもキツネのしっぽで。
そのしっぽは、どうやらわたしと同じようにしゃがみ込んだ俊哉くんのおしりにつながっているようにしか見えなかった。
「な、な、な……」
あまりにびっくりしすぎて、言葉が出てこない。
「どうしたの、二人とも。早くごはんを食べないと、学校に遅刻するわよ……あら」
キッチンの方からやってきたおばあちゃんが、床にしゃがみ込んだわたしたちを見て、足を止めた。
「もうバレちゃった」
おばあちゃんに向かって、てへっと笑ってみせる俊哉くん。
「そう。……とにかく二人とも、早く朝ごはんを食べちゃいなさい」
それだけ言うと、おばあちゃんはキッチンへと戻っていってしまった。
……ちょっと待って、おばあちゃん。
おばあちゃんも知ってるってことだよね⁉
なんでキツネの子なんかと一緒に暮らしてるの⁇
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