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「女の子に触るとね、出ちゃうらしいのよ」
わたしの正面に座ったおばあちゃんが、ごはんを口に運びながら、どうってことなさそうな口調で言った。
「女子に触らなくても、びっくりしただけで出ちゃうこともあるんだけどな。……うわっ、この鮭、うまっ」
わたしの隣で、器用にお箸を使ってごはんを食べているのは、人間の男の子に見えるけど、本当はキツネの男の子。
あんなことがあったのに、二人とも普通すぎない⁉
「一応、学校ではヒミツにしてるから。そこんとこ、よろしくな」
いや、『よろしくな』じゃなくて。
どうしても我慢できなくなって、わたしはかしゃんと箸を置いた。
「ねえ、それって、みんなをダマしてるってことだよね?」
お味噌汁を飲もうとしていた俊哉くんが、わたしの言葉を聞いて、ぴたっと動きを止める。ゆっくりとお椀を机の上に置くと、俊哉くんがわたしの方を見た。
「だったら日菜は、人間じゃなきゃ学校に行っちゃダメって言いたいってこと? 人間でも学校に行きたくないやつはいるし、キツネだって学校に行きたいやつもいる。別にいいじゃん。自分の生きたいように生きれば」
それはそうかもだけど……って、キツネに言い負かされてどうすんの。
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